データバックアップとは?
データバックアップとは、オリジナルデータが消失または破損してしまった場合などに備えて、復旧に使用するデータのコピーをシステム上に作成する処理を言います。古いファイルをシステムから削除してしまった場合にも、バックアップを使えば、そのようなファイルを復旧できるようになります。
多くの企業や組織は重要なデータをバックアップで保護しており、バックアップは会社の災害復旧計画や事業継続戦略の主要な要素の 1 つとなっています。
データバックアップ – なぜ重要なのか?
企業や人はデータへの依存度が高くなっています。人が空気や水、食糧なしでは生きていけないのと同じように、企業はデータがないと存続できません。適切なバックアップや災害復旧計画を備えていない企業の 40% は、災害時に生き残れません。
どのような企業も、包括的なバックアップ戦略を担当するバックアップ管理者を任命していなければなりません。このバックアップ戦略には、バックアップのソリューション、ツール、対象、スケジュールとインフラ、ネットワークとストレージ、リカバリ時間目標(RTO)、リカバリポイント目標(RPO)などが含まれます。
バックアップ戦略とソリューションを備えておくことが、企業にはとても重要となります。
データバックアップ - 何をバックアップすべきか?
バックアップ管理者の主な任務は、どんなデータをバックアップし、保護するのかを理解し、定義し、管理することです。データ消失のリスクを軽減しようとすれば、ファイルやデータベースをバックアップするのはもちろんのこと、オペレーティングシステムやアプリケーション構成なども含めた、すべてをバックアップしたいと思うことでしょう。仮想化を採用しているなら、仮想マシン (VMs) だけでなく、ホストや管理コンソールもバックアップしたくなるでしょう。クラウドの Infrastructure as a Service(IaaS) を使用しているのなら、それも対象に含めたいところでしょう。さらに、モバイルデバイスも忘れてはなりません。たとえば、CEO のタブレットには、サーバーに保存されているものよりも重要な企業データが入っているかもしれません。
インフラを変更するたびに、バックアップの対象を再検討しましょう。新しいデバイスやソリューション、サービスでも、データは使用されています。スローガンは「すべてを頻繁にバックアップする」です。
バックアップソリューションは、すべてのデータを確実に保護できると思えるものを選ぶようにしてください。これができないと、一部のデータが保護されていなかったり、複数のバックアップソリューションが必要になったりするかもしれません。たとえば、データセンターに物理的サーバーを所有する場合、VM だけをバックアップするソリューションでは十分ではありません。複数の異種ソリューションを実行してもいいのですが、バックアップ対象となっているデバイスやシステムをまとめてバックアップできるソリューションを使ったほうがもっといいでしょう。
バックアップすべきデータの種類
財務データ(クレジットカード取引、請求書、売掛・買掛ファイル、給与計算など)、顧客情報、ベンダー情報、パートナー情報、通信記録・電子メールアカウント、すべてのアプリケーションとデータベース、プロジェクト管理ファイル、人事記録、オペレーティングシステム、設定ファイル、その他従業員が作成したファイルなど、重要なデータファイルとドキュメントをすべてバックアップする必要があります。
バックアップの頻度は?
バックアップの範囲を決めたら、次に重要なのはバックアップの頻度とスケジュールを決めることです。
バックアップのスケジュールは、毎日作成するデータ量に大きく依存します。データ保護のベストプラクティスでは、少なくとも週に1回はフルバックアップを開始することを推奨しています。営業時間外や週末でも構いません。
しかし、フルバックアップとフルバックアップの間に1日1回増分(または差分)バックアップを作成することが重要です。そうすることで、万が一データ損失が発生した場合でも、業務上およびユーザーによって作成されたすべてのデータが安全に保存されます。
上記は一般的な経験則に従ったものですが、中には膨大な量のデータを管理している企業もあります。そのような場合、1日1回のバックアップでは不十分かもしれません。一方、扱うデータ量が少ない中小企業では、ストレージ容量が少なく、より手頃なバックアッププランを選択することがあります。このような場合、毎日バックアップを作成すると、頻繁にチェックしない限り、すぐにストレージがいっぱいになってしまう可能性があります。
適切なバックアップ頻度を確保するためには、企業は毎日(または毎週)扱うデータを計算し、データ作成の平均値を補完するようにバックアップをスケジュールする必要があります。
データバックアップ - RPOとRTO
頻繁にデータを変更している同僚がいる場合でも、災害時には、最後のバックアップから障害が起きた瞬間までの期間に作成されたすべてのデータが失われます。この期間をリカバリポイント目標(RPO)と呼び、障害の際にシステム上でデータが失われかねない最長期間を指します。
RPO が短いということは失うデータが少ないことを意味していますが、バックアップの頻度が多くなり、保存容量も多くなり、バックアップを実行するためのコンピューティングとネットワークのリソースもより多く必要になります。RPO が長いと身軽ですが、失うデータも多くなります。
多くの中堅中小企業は RPO を 24 時間と定義しています。これは毎日 1 回バックアップをとる必要があるということです。最新のバックアップソリューションを使えば、RPO を数分にまで短縮できます。また、重要なシステムにはより短い RPO を適用し、セカンダリシステムにはより長い RPO を適用する、ティアード RPO も可能です。
もう 1 つ重要な変数はリカバリ時間目標(RTO)で、この変数は、障害が発生した瞬間から通常のオペレーションにどれほど早く復旧できるのかを示しています。システムがダウンすると、企業には損失が発生することになり、損失を最小限に抑えるためには迅速に復旧する必要があります。ただし、RPO との関連で言えば、RTO をより短くするには、より高速のストレージやネットワーク、テクノロジーが必要となり、より多くの費用が発生します。
多くの企業の RTO は通常、数時間です。
社内の係者をまじえて、システムの RPO と RTO について話し合ってください。RPO と RTO が決まったら、ソリューションとストレージも決定できるようになります。
データバックアップのソリューション
多様なRPOとRTOを実現し、多様なスコープを処理するために、複数のタイプのバックアップソリューションとツールが市場に出回っています。 ここでは、最も一般的なものを紹介します。
ハードウェアアプライアンス
これらアプライアンスの多くでは、デバイスが 19 インチラックに取り付けられて、ネットワークに接続されてストレージとして機能します。アプライアンスのインストールと構成は簡単です。ほとんどの場合、サーバーやオペレーティングシステムを別途セットアップしたり、ソフトウェアをインストールしたりする必要はありません。システムにインストールされたエージェントがバックアップを実行し、アプライアンスに実装されているインターフェイスを通じてソリューションにアクセスします。
ただしハードウェアアプライアンスが故障したら、すべてのデータバックアップソリューションが失われることになるのを忘れないようにしてください。セカンダリロケーションにバックアップしていても、復旧するにはバックアップソリューションを再設定する必要があり、復旧時間がさらに長くなります。
ソフトウェアソリューション
ソフトウェアソリューションはシステム自体にインストールされ、バックアップ処理を行います。既存のシステムを使用できるソリューションも多くありますが、バックアップ専用に設定された専用サーバーが必要なものもあります。このようなソリューションでは、オペレーティングシステムとバックアップソフトウェアをインストールして構成しなければなりません。多くの場合、仮想マシン(VM)上にソフトウェアをインストールすることができます。
ハードウェアアプライアンスとの比較では、インフラを頻繁に変更する場合にはとくに、ソフトウェアソリューションのほうが柔軟性が高くなります。また、ソフトウェアソリューションはハードウェアアプライアンスバンドルを購入するよりも安価で、ストレージをカスタマイズして選択、設置できます。
クラウドサービス
たくさんのベンダーが backup-as-a-service (BaaS) を提供しています。これはクラウドベースの製品で、軽いエージェントをマシンにインストールすることで、ベンダーまたはサービスプロバイダーのクラウドインフラストラクチャを通じてバックアップの設定および実行ができます。BaaS はソフトウェアよりもさらにシンプルで、システム設置もオペレーティングシステムの構成も不要です。
もちろん、慎重に扱うべきデータを持っている組織や、規制要件に遵守しなければならない場合には、BaaS ソリューション使用のクラウドバックアップが受け入れ可能かどうか確認しなければなりません。
ハイブリッドデータバックアップソリューション
バックアップの世界における最新イノベーションは、オールインワンのハイブリッドバックアップソリューションで、ソフトウェアをインストールするのか、あるいはクラウドサービスを使用するのかを、自由意志で選択できます。このようなソリューションでは両方の長所が組み合わされているため、多くの企業にとって最適な選択肢となっています。
バックアップストレージ
データのコピーはバックアップストレージに保存されます。バックアップ(およびリカバリ)を成功させるための選択および設定を行い、バックアップストレージは手元に置いておく必要があります。
ローカルまたは USB ディスクへのデータバックアップ
ローカルディスクに十分な空き容量があれば、ローカルディスクまたは外付け USB ドライブにバックアップできます。
このような外付けメディアへのバックアップは迅速かつ便利で、ネットワークは不要です。ローカルバックアップの欠点は、システムが火災や洪水で破壊された場合、同じ場所に保管されていたバックアップも破壊される可能性があるということです。また、多くの場合、コンピュータごとにバックアップ管理をしなければならず、環境が大きくなれば管理が面倒になります。
ローカルディスクや USBディスクバックアップは、システム台数が少ないときの手っ取り早いバックアップとしては最適で、ソフトウェア障害発生時の個々のファイルやシステムのリカバリに適しています。(例えば、WindowsをブータブルUSBにバックアップしておけば、障害が発生したときにリカバリが可能)
ネットワークシェアや NAS へのバックアップ
これは最も一般的なストレージオプションの 1 つです。集中型 NAS(ネットワークアタッチストレージ)、SAN(ストレージエリアネットワーク)やシンプルなネットワークシェアを使うと、1カ所にたくさんのデータ、あるいは企業全体のデータのバックアップを保存でき、ウィルス攻撃やデータ破損が発生したときに、ファイル、システムおよびデータセンター全体を復元できます。ただし、ローカルディスクと同じように、NAS も SAN も、施設全体が破壊されるようなハリケーンや台風などの地域大災害が発生した際には、データ復旧は望めません。
テープへのデータバックアップ
大災害から復旧するためには、主要データセンターから最低 100マイル(160キロ)離れた場所にデータのコピーを保存していなければなりません。
伝統的な方法では、データのコピーをテープデバイスに保存し、そのテープを離れた場所に配送します。LTO-7 のような最新テープ技術を使うと、2.5TB の圧縮データを 1 本のテープに保管でき、大容量データを保護したい場合にかなり効果的です。
テープバックアップの欠点は、データ復旧が必要なときに、物理的にテープを手元に戻さなければならないため、RTO が長くなることでしょう。また、バックアップソリューションのなかには、リカバリオプションが限定されているものもあります。たとえば、データからシステム全体を復旧するのは可能ですが、個別のファイルやフォルダーは復旧できません。さらに、バックアップを作成して復旧を行うには、テープドライブやオートローダー、テープライブラリが必要となり、このようなデバイスは比較的高額となっています。
クラウドストレージへのデータバックアップ
テープバックアップに代わる最新技術がクラウドストレージです。このタイプのソリューションは、ストレージの量を契約してから、クラウドベンダーやサービスプロバイダーのデータセンターにデータを保存するというものです。テープドライブのようなハードドライブは必要ありませんが、クラウドへバックアップを送信するインターネット接続が必要です。ベンダーは、物理的なデータ配送や初回シードプログラムを提供し、大量データのアップロードに関する問題を解決するのに協力することもあります。
データバックアップストレージ – どれが最善?
どんなストレージソリューションにも欠点はあります。最適なソリューションを選択するためには、自社のビジネス要件、RPO および RTO に基づいてストレージ戦略を策定しなければなりません。また、産業分野で高く評価されている 3-2-1 バックアップアプローチに基づいた、データバックアップソリューションが必要です。3-2-1 バックアップアプローチとは、3 カ所に、2 つのタイプのストレージを使ってデータを保管し、1 つのコピーを社外に保管することです。3-2-1 戦略のよい例としては、 disk-to-disk-to-tape(D2D2T) と disk-to-disk-to-cloud(D2D2C) ソリューションがあります。このようなソリューションでは、中央のネットワークストレージにデータをバックアップし、同じバックアップをテープまたは社外のクラウドストレージにコピーします。
まとめ
企業の存続は企業データの存続に左右されます。信頼できるデータバックアップ戦略を策定したら、企業が目標とするバックアップ範囲、RPO および RTO を決定します。その後に適切なソリューションを実行するために、1 つまたは複数のストレージを組み合わせたものを設置し、バックアップを実行・監視します。
そうなって初めて、企業は、予測できない出来事が発生した際にも、安全に経営を存続できるという確信を得ることができます。
アクロニスについて
アクロニスは2003年にシンガポールで設立されたスイス企業です。アクロニスは、世界15か所のオフィスと50カ国以上で拠点を擁しており、Acronis Cyber Protectソリューションは150カ国に26言語で提供され、2万社を超えるサービスプロバイダーで利用されており75万社を超える企業を保護しています。